保守主義とナショナリズムの関係とは?わかりやすく簡単にまとめる

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 コメント欄で先日、読者から保守主義(Conservatism)とナショナリズム(Nationalism)の関係性を解説してほしい、との要望をいただきました。

 なるほど……あまりにも保守主義とナショナリズムは、いつも一緒に語られます。ところが関係性は、あまり明確にされません。説明される機会がありません。

 初歩の初歩なのに、なぜ説明されないのか? 質問を受けて私も、考え込んでしまいました。なぜなら、自明と思い込んでいたからです。

 それぞれを平易に解説しつつ、関係性についても明快に説明します。

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おさらい 保守主義とは何だろうか?

 保守主義とは、理性よりも自生的な秩序や伝統を重視します。長い時間をかけて作られた、歴史の堆積物を重視します。

  1. 不可知論(理性万能主義への警戒、常識や中庸での判断)
  2. 社会有機体論(社会を動的なものとみなし、不確実性もあるとする)
  3. ゆえに自生的秩序を壊さないように、漸進的に改革をすすめる

 自生的な秩序の最たるものは、共同体です。現代でいえば国家です。また国家内の、常識や伝統や文化、習俗なども重視します。
 急進的な改革への対抗が、保守主義の原点です。

 保守主義の父、エドマンド・バークはフランス革命を批判しました。理性万能主義の暴走だったからです。

 急進的イデオロギーに対抗するイデオロギー。それが保守主義です。

 中野剛志さんは、保守思想を体系的に説明しようと試みます。「保守とは何だろうか」は、大変おすすめできる著書です。

ナショナリズムとは何だろうか?

 ナショナリズムの語源は、ラテン語のnātĭōに遡ります。英語ではnationです。
 ネーションとはなにか? 共同体と、共同体の成員を指す言葉です。

 民族も共同体の1つの形なので、日本でナショナリズムは「民族主義」とも訳されたりします。
 本来は共同体主義と、訳したほうが適切かと思います。

 私はナショナリズムを「国民意識」と表現するのが、適切だろうと思います。
 国家が共同体の、最大単位だからです。

 ナショナリズムの起源には、2種類の説があります。近代主義と原初主義です。
 近代主義は国民国家が形成され、それに伴ってナショナリズムが発明されたとする説です。
 原初主義は神話や民族など、古く昔からの伝統や文化などが起源とする説。

 詳細な議論は避けます。近代主義、つまり国民国家の誕生とともに、ナショナリズムが発明されたという説が有力なようです。
 日本でも江戸時代の幕藩体制では、藩がクニと認識されてました。
 日本という「国民国家(意識)」が生まれたのは、明治維新以降です。近代主義が有力だと、私も思います。

 ナショナリズム=国民意識。大体の場合は、この解釈で適用できます。
※ナショナリズム自体は、意味が広くて定義がなされていない。

保守主義とナショナリズムの関係性

 明快に結論だけを、先に提示します。

  1. ナショナリズムは、必ずしも保守主義へ連結しない。
    なぜなら国民国家に存在する、ありとあらゆるイデオロギーと連結可能だから
  2. 保守主義は必ず、ナショナリズムと連結する。
    イギリスの産業革命での近代化、それに伴う国民国家化とともに生まれたのが保守主義だから

保守主義とナショナリズムの関係をややこしくする、1980年代の激動と保守の死

 保守主義の歴史について、かいつまんで述べます。

  1. フランス革命を批判して、エドマンド・バークは保守主義を形作った
  2. イギリスの産業革命以降、保守は資本主義を警戒した。この頃、保守は社会主義側に組みしていた
  3. 第一次、第二次世界大戦後、保守は共産主義と対立。資本主義陣営に組みした
  4. 1970年代まで西側陣営も、大きな政府だった
  5. 1980年代になると、西側陣営が新自由主義に変化。世界的に保守と結着した
  6. 東西冷戦終結後、保守は新自由主義と手を切れなかった
  7. 1994年、政治哲学者のジョン・グレイは「保守の死」を宣告する

 1つ注意してほしいのは、2.の保守の社会主義の擁護です。産業革命、グローバル化によって格差の拡大、労働者の長時間労働や低賃金。当時もこういった問題がありました。
 当時の保守主義者は自由放任の資本主義を警戒し、大きな政府という社会主義に組みしたのです。

 東西冷戦では、保守は共産主義の急進的改革を警戒しました。保守=資本主義陣営は、この頃に出来上がった図式です。

 ジョセフ・シュンペーターによれば、資本主義は「創造的破壊」という革新の連続です。保守主義者が「革新を保守するようになった」のです。
 「革新の保守」は、新自由主義との結託で加速します。

 新自由主義は、グローバリズムを伴います。グローバリズム=地球主義です。ナショナリズムと相入れません。
 大きな矛盾を抱え、保守主義は自縄自縛に陥ったのです。

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Muse

待ちに待った(笑)解説ありがとうございます。
前にも述べたように、(これ自体多義的な概念である)ナショナリズムと、コンサーヴァティズム(保守主義)、さらにパトリオティズム(愛国主義)も含めると、とかく一緒くたにされて議論されるているケースが多いと思います。

もっとも、現実の複雑極まる社会思潮の分析にあたって、主義とかイデオロギーとかの類型に拘り過ぎると、無理やり各類型に当てはめて理解した気になってしまう危険もあります。イデオロギーに拘り過ぎるのも、思考停止や現実逃避の温床となる。主義(イデオロギー)ではなく常識(コモンセンス)を重視する保守思想の戒めるところ。

ところで、保守主義とナショナリズムを決して混同してはならないと、前々から思っていた事例として挙げられるのが、明治維新以降の日本の思潮です。別のエントリー(ガッチャマン何とか)のコメントにも書いた通り、「明治維新以来の我が国において、国粋主義・超国家主義的なナショナリズムが支配的となることはあっても、真の意味での保守思想が根付くことは全くなかった」、「現代日本社会において、この”真の意味での保守”を唱える言論はごく僅か」という事例です。

一方、単なる自称保守ないし似非保守は腐るほどいる。例えば、冷戦時代で思考停止した反共ないし反左翼、経済界と結びついた新自由主義者、排外主義者(レイシスト)、短絡的な復古主義者(例えば、明治憲法を復活せよとか唱える連中)、安倍長期政権をヨイショする御用メディアやライター、そして情弱のネトウヨといった具合。国や社会の崩壊は言葉の乱れから始まると、よく耳にしますが、この”保守”の乱立という現象などその最たる例だと言えます。

Muse

下の阿吽さんのコメント
「自縄自縛に陥ったものを、保守主義者と言うのでしょうか・・・?」

にあるとおり、1980年代のレーガン、サッチャー、中曽根政権に見られる「新保守主義」は新自由主義と道義であって、このように変質した保守はもはや真の保守主義(不可知論・社会有機体論・漸進的改革)とはいえず、ゆえにグレイによって”保守の死”が宣告されたといえます。

そして、この新保守主義=新自由主義がグローバリズムと結びついて、伝統・文化・慣習を壊してきただけでなく、グローバル外資と結託した政権によっていまや国民主権(民主主義)すら危機にさらされている。その成れの果てが、今の自民党安倍政権や維新政治ではないかと。

ちなみに、昨今の欧州における脱EUの流れ(ブレグジットをはじめ、フランスの国民戦線、イタリアの五つ星運動や同盟など)、それから米国におけるトランプ政権の誕生や民主党のサンダース現象などは、いずれも反グローバリズムの政治運動ですが、これは上記の本来の保守主義(不可知論・社会有機体論・漸進的改革)とは無縁のものであって、むしろ急進的な民族主義ないしナショナリズムの表れだと思うのですが、いかがでしょうか?(ただ、サンダース現象は社会民主主義的性格のものか?)

一方、日本ではこの種の自国第一主義=ナショナリズムの運動が全く盛り上がっていないのが残念です。

阿吽

>日本という「国民国家(意識)」が生まれたのは、明治維新以降です。近代主義が有力だと、私も思います。

近代的な意味でのナショナリズムはたしかに、明治以降かとは思いますが・・、江戸幕府以前から、国学の発展等も顧みますと、プレ・ナショナリズム的なものは十二分に発生はしていたかと思います。

それによって、明治における近代化の達成率も、他の(当時の列強以外の)発展途上国に比べても高かった・・というのはあるのではないかと思います。

,
>大きな矛盾を抱え、保守主義は自縄自縛に陥ったのです。

自縄自縛に陥ったものを、保守主義者と言うのでしょうか・・・?

真に保守主義者なら、陥らないと思いますね・・。

まあ、陥らなかったら陥らなかったで、そういう者は少数派の冷や飯食いかとは思いますが(笑)

それでも言いたくなっちゃうんですよね。

故、西部邁さんなんかも、きっとその1人だったんじゃないかとは思いますが・・・。

阿吽

もちろん、識字率の高さも日本の近代化には十二分に資する点だったのではないかとも思います。

ただ、もちろん、ヤンさんも十二分に認識はされているとは思いますが・・、日本が他の当時同じ後進国だったところと違って近代化を達成できた要因には・・、

唐、つまりは中国からの文化・宗教との対比、もしくはカウンターとしての、古事記、万葉集等の研究による国学等の発生・・、さらには、蘭学等のヨーロッパ文化との再接触による、日本とヨーロッパ諸国とを対比する形での、改めての日本認識・・・、

さらには、明治国家による立憲主義的政府の円滑な樹立には、ヨーロッパの神の元の平等に準ずる、天皇のもとの四民の平等(まあ、結果としてこうなった、と言う感じで)・・というのもあったりして、様々な要素がある程度複合的に絡み合った結果とも受け止められるのではないかとも思います。

あとはまあ、近代的産業の導入に耐えうるレベルでの、江戸期におけるある程度の国内的な資本の成長、等々いろいろあるでしょうか。

で、先にも挙げましたその中の一要素として、国学の発展等も、それが武士、公家、町人、地主層等、ある程度の社会の広範な階層に広まることによって、ある程度の、ではありますが、プレ・ナショナリズム的なものは、十二分に、特に幕末までには、その後の明治の近代化に十二分に資するレベルには・・、国内的には発生していたのではないかと思います。

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