機能的財政論でインフレとデフレを考える-政府支出の適正額と生産性

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 本稿ではもっとも基本的な、インフレとデフレを解説します。現代貨幣理論(MMT)のレンズを通して、見ていきましょう。

 よく「生産性が上がるから、賃金が上がるのだ」という言説を聞きます。しかし海外では統計と研究によって、「むしろ最低賃金を上げるから、生産性が上がる」という真逆の結果が出ています。
 実際にイギリスは、この20年間で持続的に最低賃金を上げています。それに伴い、生産性も上がるのだそうです。

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インフレとは?

 インフレとは「供給<需要」という状態です。需要が多いので必然的に、モノやサービスの値段は上がります。
 貨幣の価値が毀損していく状態、ともいえます。

 例えば1000円で買えていた商品が、インフレでは1年後に1050円になります。これは「モノやサービスの値段が上がった」とも「貨幣の価値が下がった」とも捉えられます。

2種類のインフレ

 インフレには、良いインフレと悪いインフレがあります。

  1. 需要増大型の、良いインフレ
  2. コストプッシュ型の悪いインフレ

 例えば石油は、日本では生産されていません。よって輸入に頼っています。オイルショックのように、石油の値段が高騰するとモノの値段は上がります。
 同じインフレでも、こちらは経営と生活を圧迫する「悪いインフレ」になります。

 需要増大型インフレは、需要が需要を呼びます。例えば政府が橋を作ると、橋を作る土木機械が必要になります。人手も必要です。
 その労働者たちは賃金をもらい、その土地の飲み屋にいってお金を落とすかも知れません。

 1の投資や(政府)需要が、2や3になることを「乗数効果」といいます。

インフレになると売上が上がり、賃金も上がる

 インフレは通常、賃上げを起こします。

  1. 需要が増えてインフレになる
  2. 需要に対応するため、人を雇う
  3. 労働市場が売り手市場化する
  4. 企業は人手を賄うために、より良い労働環境や給与を提示する

 上記のように循環していきます。

デフレとは?

インフレとデフレ

 デフレはインフレと逆に「供給>需要」の状態です。物価が下落する=貨幣価値が上がっていく状態、ともいえます。
「物価が下落するなら、生活が楽になるじゃないか」

 こう考える人もいるでしょう。しかしデフレは、物価の下落以上のスピードで、所得を下落させます。

 資本主義は、インフレを前提条件とします。デフレは「異常事態」なのです。

  1. 需要が減って、デフレになる
  2. 需要が減ると、売上が減る。市場競争は過大になる
  3. コスト削減のため、人件費も削るので所得が減る
  4. 物価下落速度以上の速度で、所得が下落していく

 端的にいえば、デフレとは「貧困化」です。

 デフレではどんどん、無駄と判断されたものが削られます。人件費もその1つです。
 仕事とは給料だけが対価ではありません。その仕事のノウハウの蓄積も、必要なことです。しかし労働市場が縮小したり、非正規雇用が拡大すれば「仕事のノウハウ」を蓄積する機会を、労働者は失います。

 こうしてデフレは、最終的には供給能力も毀損していきます。

デフレと合成の誤謬

 合成の誤謬とは、「ミクロで正しいことが、マクロで間違った結果を生む」という概念です。

  1. デフレで売上が上がらないので、企業はコストカットに邁進する
  2. デフレで所得が減るので、個人は節約する
  3. 全体として需要が減り、よりデフレを加速させる

 上記のような状態です。
 企業も個人も、自衛のために合理的な行動をしただけです。デフレ下で大盤振る舞いを出来る、企業も個人も存在しません。
 したがって一度デフレになると、解決できるのは政府しかいません。

現代貨幣理論(MMT)の機能的財政論で考える、政府の適正な支出額は?

 現代貨幣理論(MMT)は、信用貨幣論・租税貨幣論・機能的財政論の3つが支柱です。が……今日は機能的財政論だけで結構です。

 機能的財政論とは、アバ・ラーナーが唱えた経済論です。すごく端的にいえば「不景気やデフレのときには、政府が支出して回復させる。好景気のときには、政府が支出を縮める」というものです。
 少しだけ詳しくいえば、上記が可能なのは「信用貨幣だから」となります。

 デフレは資本主義にとって、異常事態です。政府が支出=需要して、需要拡大を図らないといけません。

 では政府がどれくらい、支出したら良いのでしょう? 答えは「インフレになるまで」です。
 逆説的に、デフレが継続しているのは「政府支出が足りない、過小である」という証拠です。

 政府の一般会計予算が、100兆円を突破した! とマスメディアは騒ぎます。しかしデフレは脱却できていません。つまり100兆円程度の予算では「過小」なのです。

 では「いくらだったらいいの?」という質問があるでしょう。これは、誰にもわかりません。なぜなら「潜在供給能力が日本にどれだけあるかは、誰にもわからない」からです。

生産性と需要、最低賃金の関係性

 「生産性を高めれば、賃金が高くなる」という議論があります。しかしデービッド・アトキンソンによれば、因果関係が逆なのだそうです。
 つまり「最低賃金を上げれば、生産性が上がる」のです。
参照:最低賃金アップで「生産性が向上する | 東洋経済オンライン

 デービッド・アトキンソンの議論は、こうです。

  1. 最低賃金を上げて、経営者のケツを叩く
  2. それで倒産する企業は、生産性が低かった
  3. したがって生産性の低い企業が倒産すると、労働生産性の平均値は上がる

 ……まあ、言いたいことはわかりますが(汗) デービッド・アトキンソンの議論は、本質的ではありません。
 海外ではすでに「最低賃金引き上げで、生産性が上がった」という統計も、研究もあります。デービッド・アトキンソンの主張は正しくても、分析は本質的ではないと指摘したいのです。

 なぜ最低賃金引き上げで、生産性が上がるのか?

  1. 最低賃金引き上げで、所得が増える=需要が増える
  2. 需要の増加は、モノやサービスの価格を上昇させる
  3. 1000円の商品が、1100円で売れれば「10%の生産性向上」

 また所得が増えることで、高価格帯の商品需要も伸びます。
 今まで安い中国産の白ネギを買っていたのが、下仁田ネギを買うようになるかも知れません。

 需要の増大は必然的に、生産性を高めるのです。

日本の労働生産性が低いのは、デフレだから

 上述してきた議論で、もうご理解いただけたと思います。

 ときおりメディアでは「日本人の労働生産性の低さ」が問題になります。「日本人は労働生産性が低い! 働き方改革! 海外を見習え! 足りぬ足りぬ工夫が足りぬ!」というわけ。
 しかし日本の労働生産性が低いのは、デフレだからです。

  1. 需要が足りず、供給過多=デフレ
  2. 企業はコストカットで、市場競争を生き残ろうとする
  3. 当然、商品価格は低下。人件費も低下。利益も低下。

 これで労働生産性が、上がるはずがないでしょう。というか、下がって当たり前です。

日本の潜在供給能力の考察

 日本に潜在供給能力、つまり潜在GDPがいくらあるか? これは、誰にも答えられません。
 しかし、単年度でどれくらい政府支出を増やしたら適正か? はおおよそ、推測できます。
※高度成長期のインフレ率は、おおよそ10%程度

  1. 適正なインフレ率は、10%以下とする
  2. 乗数効果は2程度と考える
  3. 現在の日本のインフレ率は、おおよそ1%弱程度
  4. 政府支出予算は、現在は約100兆円
  5. 日本の現在のGDPは、550兆円程度

 上記の条件は、政府支出拡大を公共事業などに使用した場合です。単年度の最大値は27兆円程度の政府支出拡大が可能、となります。

550兆円*10%のインフレ率/乗数効果2=おおよそ27兆円

 では社会保障費などなら、どれくらいになるでしょう? 上記の箇条書きの条件に「消費性向0.5」を加えます。
※消費性向:もらったお金から、どれだけ消費するかの割合。公共事業の場合は政府が消費するので、1になります。

550兆円*10%のインフレ率/乗数効果2/消費性向0.5=おおよそ55兆円

 社会保障費”だけ”拡大するのなら、おおよそ55兆円程度までは大丈夫では? と推測されます。
 ベーシックインカムや社会保障、公共事業を議論する際には、上記の数字を頭に入れておくと役に立つと思います。

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黄昏のタロ

お邪魔致しますです。

>需要の増大は必然的に、生産性を高めるのです。

 「最低賃金の引き上げ」って投資の側面があるって学べたです。
 経費削減って内向きで縮こまってしまうのと、最低賃金の引き上げで需要を産み出すっ投資の様な考え方。この視点は持ってなかったです。
 政府が決めて、せーのでやるのも意味がある(効能が出やすい)のも理解できたです。

プロフェッサーカオス

>「生産性を高めれば、賃金が高くなる」という議論があります。しかしデービッド・アトキンソンによれば、因果関係が逆なのだそうです。
>つまり「最低賃金を上げれば、生産性が上がる」のです。

山本太郎もこれは何百回と説明している
これはよく考えれば当たり前なんだよな

誰かが買ってくれて、それが給料になる
誰かが買わないと、潜在生産力があっても在庫が増えたり、売れ残るから生産しようと思えず、生産性が上がらない
多くを買わせる為には、少数ではなく、多数が余剰の金を多少なりとも持っている必要がある
つまり平坦な平等は悪平等だが、平等に近づける必要がある、これを格差縮小と呼ぶ
平等に近づけるというのが本質だが、平等というワードは共産主義アレルギーが日米にはある為、使えんワードだw
まあ基本的には下が貧困に陥らなければ格差があっても問題はないが

いずれも当たり前の話なんだが奴隷道徳に支配されると「働けば金になる」というところで思考停止する
今の破綻した日本の原因の多くは「独特の間違った道徳」から来ているものが多い

最たるものが奴隷道徳、奴隷労働以外の労働についての道徳観、弱者に対する道徳。節約ブーム。節約や貯金を道徳的行為とする
日本の成長を阻害しているミョーな道徳がある
ネトウヨも狂った道徳観を行動原理の一つにしている可能性があるww

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