働き方改革で残業は減ったか?生産性や効率性は上がったか?

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 働き方改革が今年2019年4月から、大企業に適用されました。2020年4月1日から、中小企業でも施行される予定です。

 働き方改革は残業規制、時間外労働の上限規制といわれ、残業を減らす役割を期待されています。上限を超えた場合には、事業主に6ヶ月以下の懲役ないし、30万円以下の罰金が科せられます。

 しかし残業の実態はどうなのでしょう? いくつかの報道では「むしろ悪くなった」ともささやかれます。デフレに近い現状で、働き方改革ははたして可能なのか? 分析していきます。

日本の中小企業と大企業の割合。雇用の7割は中小企業

 まず、日本の産業の全体像を把握しておきましょう。
 日本の中小企業は、全企業の99.7%を占めています。国内雇用の7割が、中小企業によるものです。
参照:DIALOG 日本の未来を語ろう :朝日新聞デジタル(2016年度統計)

 働き方改革を考えるとき、上記の数字は非常に重要です。

中小企業は働き方改革に取り組めない?

 2019年3月の報道、あしたのチーム、働き方改革の実態調査- 取り組んでいる中小企業は3割 | マイナビニュースによれば、働き方改革に取り組んでいる中小企業は、全体の3割です。
 働き方改革に取り組めない理由の第1位は「人材不足」です。

 残業時間を削ろうとしても、仕事の効率化は容易ではありません。そして、仕事量も減るわけではないのです。
 したがって残業規制に備えるとすれば、人手の確保が優先されるのでしょう。

 上記の「人材不足」の1つ目のケースは、募集をかけても人材が集まらないことです。しかし2つ目のケースもあるのではないか? つまり「売上が少ないので、人材確保がままならない」ケースも、潜在しているのでは? と思います。

 中小企業の景況感はどうでしょう? 業況判断DIとは、その業種の景況感を表す数字です。

 2018年版中小企業白書・小規模企業白書概要によれば、中小企業の業況判断DIは2017年、▲15ポイントです。
 中小企業庁:中小企業景況調査報告書でも2019年1-3月期はおおよそ▲15ポイントで、改善の兆しが見られません。

働き方改革で疲れが増加?

 2つの記事をご紹介します。

「働き方改革」のせいで疲労が倍増!? 80年代生まれの“疲れ”の実態 | 80年代生まれのリアル | EL BORDE (エル・ボルデ) – デキるビジネスパーソンのためのWEBマガジン

働き方改革の現状に激怒の声「残業の承認に30分かかる」 – ライブドアニュース

 どちらも中小企業とは書いてませんが、雇用の7割が中小企業です。したがって、半分以上は中小企業の社員の声と思われます。

 仕事量は変わらない。デフレで景気が悪いので、人件費のかかる人材も確保できない。生産性や効率性なんて、一朝一夕で上がらない。
 経営者はサービス残業をさせるため、わざと残業の申請を複雑にする。もしくは家に持ち帰って残業し、結局疲れが取れない。

 ありそうな話ではないですか。

設備投資なしに生産性アップや効率化は不可能

 人手の確保もままならず、仕事量が減らないのであれば、生産性や効率性をアップするしかありません。
 生産性や効率性のアップには、設備投資が必要です。
 古いデスクトップPCを、新しいものにする。社内システムを、効率的なものにリニューアルする等々。

 では民間の設備投資はどうなっているか?

グラフを見てみると、過去20年間で設備投資の金額は名目値でほとんど増えていません。これが影響しているのか、民間に流れたお金の総量を示すマネーストックの伸びも先進国と比べて芳しくありません。

【民間設備投資】推移を図解|ニッポンの数字

 過去20年間の設備投資の水準は、2001年と2019年でほとんど同じレベルです。
 なぜ、民間設備投資が増えないのでしょう? デフレだからです。

 デフレは供給>需要の状態です。したがって市場では価格競争と薄利多売が、繰り広げられます。明るい売上のめどは、なかなか立ちません。
 余裕のある大企業は、内部留保や債務返済に利益を回します。なぜなら、デフレとは物価の下落=貨幣価値の上昇でもあるからです。
 現金や預貯金を持っていたほうが、有利なのです。

 日本の雇用の7割を占める中小企業の、業況判断DIは▲15ポイントです。体力をへずられている企業が、非常に多いのが現状でしょう。
 この状況で、効率化や生産性アップのための設備投資に投資できるか? 難しいでしょう。

デフレ下で働き方改革は不可能だ

 論じてきた本稿をまとめます。

  1. 日本企業の99.7%が中小企業であり、雇用の7割を中小企業が担っている
  2. 中小企業の景況感は、非常に厳しいのが現実
  3. 長年のデフレで、民間設備投資は20年前と同レベル
  4. 売上が見通せないのに、新たに人を雇えるわけがないし、設備投資も厳しい

 売上も悪い、人件費増加もきつい、設備投資する体力も厳しい。そして、明るい売上見通しも立たない、仕事量もそのまま。
 これで残業を減らせというのは、無茶ぶりなのではないか? と思います。

 過労死や過剰な労働はもちろん論外です。しかし、あまりに状況設定が「おかしい」のです。
 例えれば「戦死はダメ! でも戦争はするね」みたいな話です。

働き方改革を”しっかり実行するため”の環境づくり

 1にも2にも、デフレ脱却をしないと話になりません。
 供給<需要となれば多くの企業が、売上に明るい見通しが立ちます。売上もあがるでしょう。

 売上があがり、利益がでれば設備投資をする余裕もうまれます。設備投資は”需要”ですから、他の企業の売上になり、循環していくのです。
 企業が好調になれば、労働市場は売り手市場(労働者有利)になります。労働者の雇用環境や所得が改善されるのです。

 デフレを脱却し、好循環にのせるためにどうするか? 何度でも書きますが、政府支出の拡大による、需要創出しかありません。積極財政しかないのです。
 政府こそが「働き方改革のための、環境づくり」をするべきです。

 逆説的ですが、政府は環境づくりの責任を放棄しています。そのくせ、法案だけを通すのですから「無責任」のそしりは免れないでしょう。
 労働者も経営者も、政府に「働き方改革とかするんやったら、環境づくりせんかい!」と訴えるべきだ、と強く思います。

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