EU離脱のスイッチングコストは莫大になりそうだ-イギリス議会のEU離脱案否決の意味

イギリス議会は政府が提示したEU離脱案を否決した

 どうやら報道によりますと、イギリス議会はイギリス政府のEU側から飲まされたEU離脱案(※1)を否決したようです。ちょっと状況をおさらいしておきましょう。

  • 2016年にEU離脱を巡る国民投票がイギリスで実施された。
  • EU側はイギリスに対してEUを離脱するのならばと懲罰的な金額を請求。
  • 北アイルランドはEUへ留まることを選んでおり、イギリスと北アイルランドの今後の関係性がどうなるのか?
  • 今年の3月末までに離脱交渉がまとまる可能性は極めて低めと見られている。
  • 合意なく離脱した場合、国内法や関税などの設定等々やることが山のようにあり、イギリス企業の混乱は避けようがない。

 さて、「合意なき離脱」英経済に打撃 GDP11%減の試算も(日経)という記事も出ておりまして、GDP11%減(最悪の場合)という数字はどうやら、イギリス政府の試算なのだそうです。それ以外にもEU側はイギリスに未払金やEU期間移転の費用等々を請求しておりまして、この金額は6兆円~12兆円というあらい幅で見積もられております。

ロックイン効果とスイッチングコスト

 現状のイギリスの状況は、経済学用語であるロックイン効果(厳密には制度的ロックイン効果)とスイッチングコストという話になっています。ロックイン効果とはなにか?非常に簡単に言うのならば、その状態を続ければ続けるほどに、その状態から他の状態に切り替わるのが難しくなるという効果です。

 スマートフォンの例が一番わかり易いでしょう。スマートフォンを変えるとその都度、データや電話帳、画像などを移し替えるのは面倒なので、多少古くても同じ機種を使い続けることになります。キャリアにしてもそうですよね。解約して、他のキャリアに手続きをしてというのが非常に面倒くさいでしょ?こうやって経路依存性を持つのがロックイン効果と呼ばれるものです。

 スイッチングコストは、このロックイン効果から逃れるときに支払わなければならないコストのことを言います。長く使ったスマホほど、次の機種に移るとなると面倒くさい(笑)これがコストですね。

 現在のイギリスはまさに制度的ロックイン効果の真只中にあり、そしてEU離脱というスイッチングに対して莫大なコストがかかる状態であると言えます。

それでもイギリスはブレグジットするのか?

 現在のところ、議会の賛成なしにEU側のEU離脱案を飲むことはできないだろう、というのが大方の見方のようです。そして議会で否決されました。(※2)つまりこのまま3月末まで行ってしまい、合意なき離脱となる可能性は割と高いように思えます。

 しかしイギリスの良いところは、どこかの大阪維新の嘘のように「もう一度国民投票だ」などと言い出さなかったところです。それほどに国民投票というものを”重く”見ているということでしょう。議会でも否決が多数を占めたようです。「これぞ民主制度!民主主義!」と思わず私は唸ってしまいました。

 極東の何処かの国の、グダグダな民主主義もどきとはちと違うなと。

柴山桂太さんの歴史観と言葉

 柴山桂太さんが動画かご著書でおっしゃっていたかと思うのですが、柴山桂太さんによると「歴史はイギリスから動いて、アメリカもだいたい動く。一番最後が日本」なのだそうです。現状を見ていると完全に一致しているように思えます。

 なにせ、アメリカは不安定な大統領だとは言えトランプはアメリカ・ファーストを掲げ、中国はそのアメリカになんとか対抗をしようとしている。第二次世界大戦まで覇権国家であったイギリスも、ブレグジットで動き出そうとしている。そんな中で我が日本がやったことと言えば、入管法規制緩和、漁業法規制緩和、カジノ法案、水道民営化等々のグローバリズム規制緩和でございます。

 すでに時代はかなり動き始めているのに、国際的な情勢も現状も見えなくて、グローバリズムに突っ走っている有様なのです。どの口で「グローバルスタンダード」とか言うのでしょうね?と皮肉の1つでも言いたくなります。

日本がやるべきこと

 日本は1990年代まで高度成長期やバブルなどによって豊かになりましたが、その豊かさが現在はスイッチングコストを引き上げていくことでしょう。つまり経路依存性というわけです。失われた20年を直視できない政治家、メディア、日本国民であり、自分たちが失敗し続けたと認めたくないがために、成功するまで規制緩和と構造改革路線に突っ走るという矛盾を抱えているわけです。

 もっとも、規制緩和と構造改革路線は永遠に成功を収めないわけですが。

 規制緩和・構造改革路線はすなわち緊縮財政とイコールであり、また自由貿易や移民拡大ともイコールなのです。とすると我々は財政出動路線、規制強化・構造改革をしなければなりません。当然ながら移民拡大にも規制を強化して、拡大しないようにしなければなりません。

 しかし今のところは・・・ですが上述した路線に行くために必要なスイッチングコストは、「失われた20年という失敗を認める」だけで大部分が済みます。・・・あとアメリカからの自主独立を果たす気概があるかどうか?も必要ですが。(いい加減に国際社会=アメリカという意識はやめなければなりません)

 日本国民が自らの意識を変えることができるのかどうか?が問われているのだと思います。

参照と※数字のソース

※1 イチから分かるBrexit 英議会がEU離脱案否決

――解決策はあるのか。

「英国のメイ政権がEU側との交渉でまとめた離脱協定案は、20年末の移行期間までに解決策が見つからなければ、英本土を実質的にEUに部分残留させる措置を盛り込んだ。そうすれば、アイルランド島での国境管理の必要性がなくなるからだ。しかし、EUに批判的な勢力から『永遠にEUの支配下に残る』との批判を受け、否決された」

※2 英議会、EU離脱案を大差で否決 野党が内閣不信任案

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阿吽

なによりもまずそうなのは・・、北アイルランド紛争の再燃ですかね・・。

現状では、アイルランドと、北アイルランドの国境がほぼ無い状態で、それで独立派もある程度納得してる模様ですが・・、これが、国境が復活するとなるとどういうふうになるかわからない・・、みたいな感じのようです。

また、この混乱に関連して、またスコットランドも独立運動が再燃しかねないという話しですし・・・。

ブレグジット、どうなりますかね・・。

ほんと、三橋さんじゃないですけど、『行きはよいよい帰りは怖い』ですね・・。