日韓の徴用工裁判問題は泥沼化の様相-司法への行政の介入ができるのか?という問題をはらむ

徴用工問題

日韓徴用工問題の新たな局面

 本日は仕事が押しておりますので、やや短めに。徴用工問題での報道が新たになされております。日本じらされ「法的措置」 徴用工協議要請 日本、外交問題化、誤算(ヤフーニュース)などで報じられておりますが、上記のニュースでは「韓国国内の新日鉄住金」なのか「日本国内も含む新日鉄住金」なのかが非常に曖昧でして、新日鉄住金の資産差し押さえ決定=徴用工訴訟で韓国裁判所(AFP)の報道のほうがわかりやすいかもしれません。重要な部分のみ引用します。

【1月8日 時事通信社】韓国の元徴用工訴訟の原告側が新日鉄住金への賠償命令確定を受け、韓国国内にある資産の差し押さえを申し立てた問題で、原告側は8日、大邱地裁浦項支部が申請を認める決定を下したと発表した。その上で「同社が協議に応じなければ、資産の売却命令を申請せざるを得ない」と警告した。

 日本政府は「賠償問題は1965年の日韓請求権協定で解決済み」との立場で、申請を受け「具体的な対応措置」の検討に入ったが、どの時点で実際に措置を取るかが焦点となる。

 韓国政府は対応策を打ち出しておらず、海上自衛隊の哨戒機へのレーダー照射問題などでこじれている日韓関係がさらに悪化するのは避けられない。(ふと文字筆者編集、一部引用)

 つまりこの問題、グローバルとナショナルな問題なのです。前に徴用工問題と請求権と外国判決と国内法の解説-日韓基本条約付随協定及び日本政府の特措置法で解説差し上げたのですが、基本的に韓国の裁判所や司法の判断というのは、日本国内企業が被告となる場合、外国判決を日本が受け入れるかどうか?を日本の国内法に照らし合わせて判断されます。そして日本の国内法では日韓基本条約締結後に事後法で、日本国内では韓国人の日韓基本条約以前の財産権は消滅したとされております。

 したがって韓国の司法がどのような判決を日本国内企業に出したとしても、日本の国内に留まる限りは徴用工問題のような問題で賠償責任は発生しようがありません。「日本国内では」の話です。

 しかし今回は「韓国国内の新日鉄住金」への司法の判断ということで、韓国の国内法や司法判断が当然ながら適用されます。ヤフーに出ていたニュースでも「日本政府の決め手にかける」というのはまことに事実であり、はっきりいえば原理的にはほとんどどうしようもありません。グローバルに展開する企業と、そして現地政府や国家、司法の問題というふうに捉えることが可能でしょう。

政府は司法に介入してよいのかどうか?という原理的な問題

 近代国家においては三権分立は基本とされております。行政、司法、国会でありますね。日本の場合は行政と国会がやや近く、三権分立と解釈されうるのかどうか?は少々微妙ですが。何はともあれ、三権分立というのは近代国家の基礎の基礎とされております。

 分立ですから基本的には司法権には行政は手を出せないというスタンスになります。つまり政府は裁判所の出す判決にあれこれ注文をつけるのはルール違反となるわけですが・・・今回の徴用工問題では日本政府は韓国政府に「韓国国内の裁判所の判決をどうにかしろ、対策を取れ」と要求していることになり、じつはこれはわりと「非近代的、前時代的要求」と解釈してもおかしくない。非民主主義的要求と表現してもよろしいでしょう。

 日本政府としてはここに1つのジレンマが伺えます。つまりグローバルに展開する日本企業の保護と、そして内政不干渉や民主主義の原則的な三権分立の対立です。端的にいえばEUと同じくここでも、グローバル企業・グローバリズムvs民主主義というジレンマが発生しているわけです。

 この徴用工問題について最も簡単な解決策は、被告の新日鉄住金が韓国から撤退して日本国内に回帰することでしょう。無理でしょうけれども。外に打って出ろ!とメディアが散々に騒ぎ、日本政府もそれを良しとしたのが、徴用工問題という1つの結果です。

日韓関係のこれからの情勢は泥沼化

 私は特段、嫌韓感情もありませんし、日本ヘイトな感情もありませんが、今回の問題は上述したような理由からじつは韓国政府もどうにかしたくても、どうにもならないというジレンマが伺えるような気がします。なにせ司法判断に行政が口をだすことは民主主義としてははばかられることであります。

 というわけでこの問題、完全に泥沼の様相になるのは発生した当初から外国判決や日韓基本条約、そして日韓基本条約以前の韓国人の財産権の日本国内での消滅等々を調べておりまして、「わかりきったこと」でありました。やっぱり泥沼化かと、今回の報道をうんざりと眺めております。

 さて、これからの日韓関係というのはどのようになっていくのでしょうか?大きな部分から見ていきましょう。

 第一に韓国はもはや中国の勢力圏に入らない理由がない、ということ。経済的にも、そして軍事的にも中国の勢力圏に組み込まれていくのはほとんど自明であります。また北朝鮮がなにか突飛なことでもやらない限りは、緩やかに融和をはかる方向に行くのもこれまた可能性が高い。統一まで行くかどうか?は不明ですが、韓国、北朝鮮ともに中国の勢力圏なのですから融和的にはなるでしょう。

 第二にアメリカの凋落によって韓国はアメリカの保護を当てにしなくなるかもしれません。とすればそれは日本に対しても気を使う必要性が殆どゼロになることを意味します。

 第三にアジアの国々が相対的に、日本との国力差がなくなり始めているという点。現時点ではまだまだ開きがありますけれども、そもそもアメリカの凋落=日本のアジアでのプレゼンスの凋落であり、中国の台頭なのです。したがって一前昔の「アジアのリーダーとして!」的なことはもはや言われなくなりました。

 とするとアジアの他の国々が韓国と同じように、歴史問題を外交カードとして繰り出してくる可能性は大いにあります。これは「親日国だ、反日国だ」などという程度の低い話ではなく、国際政治におけるパワーポリティクスの基本中の基本です。

 結論として日本は非常に厳しい国際環境にさらされ、韓国との関係も泥沼化していくことでしょう。厳しい国際環境にさらされた日本が選択する現実的な選択肢とはなにか?「さらなる売国で媚びを売る」に決っているではないですか(!!)なにせ日本は「平和主義」の国家なのですから(!!)(平和主義は貧困への道 または対米従属の爽快な末路という佐藤健志さんのご著書を参照してください)

 恐らくネットなのでは「徴用工問題に歴史的事実はない」みたいな論調が流行っているかもしれませんが、そして「歴史的事実がないということを、世界に発信したらきっと大丈夫」的な話にもなっているかもしれませんが・・・日本におけるフリーチベット運動が一瞬のブームで終わったように、世界はそこまで日本の歴史的事実とやらに関心はありません。主張している本人が、じゃあどれだけアメリカや中国の歴史を知ってるんだ?というね(笑)

 ましてやネトウヨ有識者のいう「情報戦」とは世界に発信するためのものではなく、自分たちのネトウヨビジネスのための囲い込み戦略を日本国内でしているだけなので、そもそも当てにするほうが間違っているのです。というわけで・・・本日の結論は非常につまらないものですが「どーにもならん」が結論でございました。

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阿吽

 まあ、日本政府的には・・、裁判がなんであろうと・・、原告側と和解のための努力をする義務が、条約によって韓国政府にはあるとか・・、そんな感じなのでしょうかね・・。

裁判結果は覆せなくても、和解金を出すのは韓国政府がやるとか、それくらいの誠意くらいはみせてくれと・・・・。(で、そんなことは、韓国政府は当然のごとくできないと・・)(まあ、韓国政府に仮に、その気があったとしても・・、どうにかできたかはいまいちわからないですが・・・)

不思議なのは・・、朝日新聞や、毎日新聞が、あんまり日本(というよりも安倍政権に対して)に不利になるような報道をしないことです。

そうなると・・、徴用工は、やはり韓国側に国際的には不利な判決だったのか・・、それとも、所詮、朝日も毎日も、旧左翼・・、肝心な所には気づかないだけなのか・・・?

そのへんのことが気になりますね・・。

 >「さらなる売国で媚びを売る」に決っているではないですか(!!)なにせ日本は「平和主義」の国家なのですから(!!)

媚びの種類にもよるかとは思いますが・・、日本政府も、今までのような韓国に対する融和的な態度は比較的(←ここ大事)取りづらくなるかとは思います。(アメリカやらなんやらまだありますので・・)

理由は、日本国内の対韓感情の変化です。

徴用工まではまだ兎も角として・・、レーダー照射事件は、ここ最近の日韓の諸々の事案もプラスして、その結果、日本国民の韓国に対する見方を大きく変えるきっかけにはなったかとは思います。

おそらく、対韓外交で変な妥協をすれば・・、今までよりかは、日本国民の突き上げが日本政府に対していくのではないかと思います。(今までよりかは)

そうなりますと・・、今の韓国政府が自身が進めた反日政策によって、自身の政策の方向性を限定的になものにしてしまったがごとく・・、日本政府も、国内の対韓感情の悪化によって、政策の方向付けが限定的になってしまう可能性があります。

ですので・・、対韓国に対しては・・、媚びを売ることができづらいということになるような気もしないでもないかなあという気も、しないでもないかなあというふうには、まあ、思います。

 もうひとつ気になることと言えば・・、この判決によって、韓国で新日鉄住金以外の、裁判での係争中の日本企業は・・、韓国内の資産を処分して、日本への回帰の動きを見せるのでしょうかね・・・?

もはや、新日鉄住金の例を見ても・・、韓国内での裁判の結果がほぼ、負け戦が確定的になってしまったのですから・・、ここから先、それら企業がねばって韓国にいる意味もないでしょうし・・。

それとも、係争中だとそういう撤退ができないんですかね?

それとも、企業の撤退なんて、やっぱ、そう簡単にはできないんですかね?

それとも、個々の企業で和解の動きにでますかね・・?

 まあ、私は日本の国防の最前線は、対馬で良いと思っていますので・・、日韓関係が悪くなれば、それはそれでかまわないとしか思っていませんが・・・・。

というよりも、もう、この経路(日韓関係悪化)は止めようがないですかね・・、やっぱ・・・・。

となると、日本に残されているのは・・、ある程度の自主防衛の確立による独立維持か・・、アメリカ・中国のダブル属国になるか・・・・、でしょうか・・・・。(まあ、いまんところの可能性の高い方は・・・、あれですが・・・・)