中国が分析する米中関係と世界情勢はおおよそ妥当である-一方で長期的な世界情勢の現実が見えない日本

米中関係

Newsweekが載せた中国の対米情勢解釈の妥当性

 やはり中国という国はあなどれない国家である、とそんな思いがする記事を朝から読んでおります。米中関係「四十にして惑う」(Newsweek)は環球時報論評の概略を載せているのですけれども、これが非常にまっとうな分析なのでありました。一部を引用しまして、その妥当性をまずは検証したいと思います。

昨年末の12月28日、中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」が「”四十にして惑う”中米関係はどこに行くのか」という評論を掲載した。孔子曰く「四十にして惑わず」から始まるその評論には、米中関係には「一つの中心」と「三つの基本点」があるとして、概ね以下のようなことが書いてある。

米中関係「四十にして惑う」(Newsweek)

 上記の1つの中心、3つの基本点はやや長いので意訳として載せます。

1つの中心、全面的に展開し始めたアメリカの対中競争

  1. 政治的、国際秩序的にアメリカは中国を抑えつけ、ないしアメリカ社会に浸透しようとするのを阻止したい
  2. 経済的にアメリカは貿易不均衡を問題視し、また中国の科学技術及び産業構造を抑止、転換したい。
  3. 中国の軍事的高まりについて、アメリカは地政学な戦略を抑止しようとしている。

3つの基本点、「断絶、規制、圧力」

 以下既略が書けないのですべて引用。

(1) 断絶 
●アメリカの優勢なハイテクが中国に流れることを阻止するために、以下の措置をアメリカが中国に対してとっている。
・技術面で中米断絶を推進する。
・中国の対外投資政策を変えさせる。
・中国の対米投資を制限する。
・中国の留学生や学者がアメリカでデリケートな技術方面の専門を学ぶのを禁止し、アメリカで科学技術の研究活動に従事するのを禁止する。
●アメリカの国防関連業の対中依存がもたらすリスクを軽減するために以下のことを実施する。
・中米産業チェーンの連鎖から脱却する。
・アメリカの国防関係請負業者(軍事産業関係者)は中国大陸にある生産基地を他に移転させる。

(2) 制限
アメリカは対中政策を「接触」から「競争」に転換したのに伴い、対中制限を強化させている。たとえばアメリカは中国の政治的浸透を制限するために、中国メディアや文化機構(孔子学院や基金会)がアメリカで活動することを制限し始めた。その目的のために中国人の入国ビザ制限を設けたりしている(筆者注:現に米連邦議会上下両院の超党派議員連は、アメリカのAP通信が、中国政府の通信社である新華社との業務提携を強化したことに対して、中国政府のプロパガンダ工作に利用される恐れがあるとして抗議表明をしている。孔子学院に関しては昨年2月28日のコラム「孔子学院が遂にFBI捜査の対象に」で詳述した)。

(3) 圧力
中国企業あるいは個人がアメリカの知的財産権を侵害しているとして、アメリカはネットビジネスやスパイ活動に対して、アメリカが実施しているイラン制裁や北朝鮮への制裁命令に違反するとして司法手続きや制裁を加えることによって中国に圧力を加えている。それ以外に台湾問題や南海(南シナ海)問題などにおいても圧力をかけている。

アメリカのトランプ政権下での5つの勢力

1.貿易保護主義者:対中貿易赤字に強い関心を持つ一派。
2.戦略保護主義者:中国がアメリカのハイテクを盗み取ろうとしているとしてそれを防止することに強い関心を持つ一派。
3.ウォール街一派:中国の金融市場に進出することに強い関心(筆者注:これに関しては拙著『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』のp.174にある「清華大学の顧問委員会に数十名の米財界CEO」とp.276にある「ウォール街と結びつく習近平」で詳述した。) 
4.国家安全タカ派:中国の戦略と競争し、中国を抑え込もうとしている。
5.国家安全穏健派:中国の軍事現代化、南シナ海、台湾問題などに圧力を加えながら、一方では激しい衝突が起きないようにするとともに、両国関係の安定に危害を及ぼさないようにしている。

 はてさて、ここまでの分析も本当にお見事と言うしかないのですが、ここからが思わずうーむと唸ってしまうところ。

米中はもはや離れられない関係にあり、新しい国際秩序ができる

 この後に続く環球時報の論評ではおおよそこのようなことを言います。「今はアメリカはトランプ政権下で混乱しているが、悲観することはない。なぜならすでに米中は離れられないからだ。アメリカの国内政治の状況が変化すれば、必ず対中政策も変化するであろう」と。

 まったくもって唸るしかない分析であり、そして至極まっとうな分析であります。私の診断でもこのまま世界情勢が推移するのならば、アメリカは対中強行政策と対中融和政策(というより譲歩)の間で揺れ動きつつ、中国の台頭が止まらない限りにおいてアメリカは相対的に国力とプレゼンスを落とすのは明白です。最終的には対中譲歩をせざるを得ないというのが、私の見立てです。

 おそらくこの見立てにはこんな反論があるでしょう。「アメリカ軍は世界最強で、世界中を相手にしても引き分けることができるくらいの軍事力なんだ!それを知らずに論じるなんぞ片腹痛い!」と。この反論には以下のような箇条書きで再反論をさせていただきます。

  1. かつてアメリカが一度でも、核保有国と戦争をしたか?
  2. すでにその「世界最強のアメリカ軍」の3分の1程度の軍事費を中国は備えている。果たしてその中国と戦争をする「民主主義的選択」がアメリカに可能か?
  3. 中国は自国防衛に戦力を割けばよいが、アメリカ軍は世界中に分散しており、中国より当然ながら集結率が悪い

 以上の論拠からアメリカは対中戦争開戦にはもはや踏み切れないし、また踏み切ったとしても無傷で済むはずがないのです。そのリスクを2003年のイラク戦争すら泥沼化させた、凋落しつつあるアメリカが取れるのか?16年前のイラクですら泥沼化して最終的には政治問題として処理せざるを得なかったのに、中国という巨大な国家に対して開戦リスクを取れるのか?国家理性があるのならば「ほとんどしない」と判断するのが正常な分析というものです。

 実際にNewsweekで報道された環球時報では、まったく開戦リスクに対しての言及がないのも、私と同じ診断をしているのでしょう。

世界情勢の長期的分析を「やりたくない」日本

 本来、上述したような世界情勢の分析を(1ケースとして考慮するだけでも)するのならば、日本は即刻財政出動および防衛費の増大によって自国の防衛を急ぎ、富国と強兵を急ぎ、そして将来的にはアメリカとの日米安保の停止ないし改正も視野に入れて動かなければなりません。

 中国との関係が悪化していくのならば、つまり中国が覇権の勢力圏を日本にまで伸ばそうとするのならば時間を稼ぎつつ、例えばロシア、インド、インドネシア等々と軍事同盟を結ぶなどの動きもしなければなりません。(これは情勢によって手を結ぶ国家は変わってきますが。もちろん、日米同盟の改正、つまり日米安全保障条約ではなく『日米軍事同盟』ができるのならばアメリカも視野に入ります)

 しかし残念ながら日本はそのような長期的な世界情勢の分析を「拒否」しております。なぜならば日米安保で思考停止して平和主義(という名の事なかれ主義)になっていることが1つ。そのうえで財政法4条のしばり、つまり「日本は国家として借金も国債も発行しちゃなりません」というものに縛られて緊縮財政をひたすらに推し進めております。

 環球時報が書いたような世界情勢の分析を肯定してしまったら、日本の失われた20年が否定されてしまうじゃないか!一体何のために緊縮財政やグローバリズムをしてきたんだ!ということで、上述したような世界情勢の分析を「拒否」しなければ、緊縮財政アイディンティティ、日米安保で守ってもらえるアイディンティティが崩壊するのです。

 メディア、新聞なども散々に「緊縮財政である!」と唱えてきましたから、Newsweekのように環球時報の論評機略を報じることはもはやできないでしょう。報じてしまったら最後、認知不協和だったことを認めることになるじゃありませんか。これは有識者も同様。

 かくして日本では、政治、メディア、有識者などが「自分が認知不協和ということを否認する」ために、まっとうな世界情勢分析が議論されず、葬り去られ、さらに現実逃避の方向へと加速するというわけ。全く救いようがない話です。

 全く救いようがない話なのですが、これが現実というお話でありました。

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阿吽

おおむね中国の環球時報の論評は正しいと思いますが・・、下記は、少し、楽観的ではないかと・・・。

>「今はアメリカはトランプ政権下で混乱しているが、悲観することはない。なぜならすでに米中は離れられないからだ。アメリカの国内政治の状況が変化すれば、必ず対中政策も変化するであろう」

いや、米中が(言うほど)離れられない関係なのは、認めますが・・・・。

アメリカと言う国は、なんだかんだで存外現実的なんじゃないかと思います。

トランプはタカ派的政策で、ガンガン無茶してやってるように見えますが・・、しかし、そんなトランプに呼応する勢力が一定数いるからこそ・・、そのタカ派的政策は成功するのではないかと思います。(逆に、成功しない政策は、それに加担する勢力が存在しない政策)

だから・・、トランプ以後も、現在の経路が継続される可能性が、微レ存・・・?(^^;)

シリア・アフガニスタンからの米軍撤退も・・、アメリカがG1からの撤退・・、地域覇権国家に自身を格下げさせる戦略の一環とも言えます。

この現在おこなわれている、米軍の世界展開からの撤退と言う経路が、この先大きく変更されるような気は、あんまりしません。

じゃあ、中国への地域覇権国家同士としてのライバル関係認定の経路も、そうそうかわらない・・・・かも・・・?

これからの時代は、米・中・露が、G3(さらに細かくは、インドとかも、あの近辺の地域覇権国家になるかもしれませんが)として存在する時代じゃないでしょうか。力関係は、アメリカを10とするなら、それぞれ10:8:8くらい・・・?(前も書きましたが・・、15世紀ぐらいまでの、各地域にそれぞれ大国が存在し、大きな影響力を誇示していた時代に逆戻りするような感覚かと・・)

アメリカとしては武力的にはあんまり手出しはできないが、大陸覇者国家としてのライバル認定にはなる・・ってくらいが・・、中国でしょうか・・・?(あわよくば、旧ソ連崩壊みたいにからめてで崩壊させられないか・・ぐらいには思っているかもしれませんが・・。(できるかどうかは、わからない))

日本としては・・、

この先は、移民法改正によって、外国人(中国人)だらけの移民モザイク並びにコウモリ国家として、米中双方へのダブル属国状態で生き残るか・・。(いや、左記だと生き残れてないですね・・・(-_-;))

経世済民的政策をして国力増大、アメリカとは、共に利用しあう関係として、西側の民主主義系国家として存続するか・・。

経世済民的政策をして国力増大、プラス核武装もして、日本が独自に東アジアの地域覇権国家の1つとなって生き残るか・・・・。

まあ、最低でも、中国と言う地域覇権国家とある程度、伍するには・・、中国10としたら、日本7~8ぐらいの軍事力は必要ですかね・・・?(ていうか左記って、これも18世紀以前までの、日本と時の中華帝国との力関係の差、くらいですかね・・、どうですかね・・?(10:7ぐらいという戦力比は、まあ適当ですが・・))(ようは、またそこに戻るということか・・?)(その関係を再度構築できれば、日本は存続可能・・、できなければ日本は元寇成功後のifルートみたいになる・・?)

こんなとこでしょうか・・?

まあ、核保有はむずかしければ・・、大規模爆風爆弾(MOAB)とか、それよりもさらに火力が強そうな新型爆弾を新規に開発して、それを1000基ぐらいミサイルに載せて隣国を狙うとか・・。(まあ、無理かな・・・・)